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取締役の「労働者」性を認めた労働保険審査会決定

*旬報法律事務所・所報(2021年夏号)担当事件報告*

 

被災者は、2015年2月の朝、会社に出勤しようとして脳出血を発症して、救急搬送されました。被災者は物流センターにて、食料品の入庫・仕分・出庫業務に従事していて、翌朝配送便の仕分業務が終わるまで帰宅することができず、部下とともに毎日深夜まで残業をしていました。被災者の残業時間は、平均で月182時間にも及んでいました。ただし、被災者は会社の「取締役」として登記されていました。

労災申請をしたところ、労基署、審査官は、弁護団の主張に理解を示しつつも「取締役」であり「労働者」ではないとして、不支給決定を行いました。それでも諦めずに、再審査請求をしたところ、審査会は、現業業務に従事していた被災者は、業務執行権を有しておらず、取締役としての職務も行っていないなどとして、不支給決定を取り消しました。2015年2月の脳出血発症から5年越しでの救済となりました。

裁判例や行政通達においては、「労働者」の地位と「取締役」の地位の併存は認められています(従業員「兼務」取締役)。「取締役」として登記されているから、「労働者」ではないと、単純に切り捨てられるものではないのです。労基署や審査官は、確立した判例や判断を尊重し、何より、当該労働者の「労働実態」に着目して、適正な判断を行ってもらいたいと強く感じました。

(弁護士 蟹江鬼太郎)

旬報法律事務所