お知らせ

担当の労災事件が報道されました◆棗 一郎・蟹江鬼太郎

棗一郎弁護士、蟹江鬼太郎弁護士の担当事件が報道されました。
「取締役」として登記されていた被災者について、労働保険審査会が「労働者性」を認めて、労災と認めた事案です。

 

●毎日新聞
通常は対象外の取締役に労災認定 労基署の不支給決定取り消し」

https://mainichi.jp/articles/20210423/k00/00m/040/173000c?fbclid=IwAR1a6l-oXmGBVpSy9lczmBCwBIYvOYbP845yAB3z-WFt2dPVmxOcmqIOb8I

 

●弁護士ドットコム ニュース
「『名ばかり取締役』に労災認定 取締役会に全く出ず、倉庫で仕分け作業 月220時間残業で脳出血」

https://news.yahoo.co.jp/articles/7368e61f1e0242d0018d629b79043b4a251db7a7
https://www.bengo4.com/c_5/n_12989/

 

【事案の概要など】

被災者は、2015年2月の朝、会社に出勤しようとして脳出血を発症して、救急搬送されました。

 

被災者は物流センターにて、食料品の入庫・仕分・出庫業務に従事していて、翌朝配送便の仕分業務が終わるまで帰宅することができず、部下とともに毎日深夜まで残業をしていました。
被災者の残業時間は、平均で月182時間にも及んでいました。
ただし、被災者は会社の「取締役」として登記されていました。

 

労災申請をしたところ、労基署、労働保険審査官は、弁護団の主張に理解を示しつつも「取締役」であり「労働者」ではないとして、不支給決定を行いました。
それでも諦めずに、再審査請求をしたところ、労働保険審査会は、現業業務に従事していた被災者は、業務執行権を有しておらず、取締役としての職務も行っていないなどとして、不支給決定を取り消しました。
2015年2月の脳出血発症から5年越しでの救済となりました。

 

裁判例や行政通達においては、「労働者」の地位と「取締役」の地位の併存は認められています(従業員「兼務」取締役)。
「取締役」として登記されているから、「労働者」ではないと、単純に切り捨てられるものではないのです。
労基署や審査官は、確立した判例や判断を尊重し、何より、当該労働者の「労働実態」に着目して、適正な判断を行ってもらいたいと強く感じました。
なお、労働保険審査会における令和元年度の救済件数(=取消件数)は29件/442件で、救済率(逆転して労災と認めた割合)は6.56%です。
例年よりは改善したとはいえ、依然として、狭き門に留まっており、この点についても改善が望まれます。

旬報法律事務所